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永年にわたる資金調達コンサルティングの豊富な体験を基に、資金調達のイロハから、高度なノウハウまで、資金調達に関連する情報満載のブログです。 別に運営する「思うように資金調達ができない方へ」のデーターベース的なブログでもあります。
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前回の続きです。
今回は、前回のM氏のどこが判断としてまずかったのか、整理してみたいと思います。

申し分けありませんが、前回の(ケース1 創業期編)を今一度読み返してください。

まず一代理店よりビジネスチャンスが期待できる開発製造販売事業に変更されたことは、決して誤りではないと思います。
ファナンスの面でも、他社の代理店としての事業よりも、オリジナルティーのある開発製造販売事業の方が、有利であることは事実です。このことの詳細は別の機会にお話しすることになると思います。

ところが今回の場合は次の点で判断に誤りがあったのではないかと思います。
①資金の確保なく、新しいビジネスに参入した。
②資金調達の時間的な余裕がなかった。
③事業の根幹になる機器の開発者の技術や人物の調査ができていなかった。
他にも要因があるかもしれませんが、主な誤りはこの三つだと思います。

①②③の要素はそれぞれリンクしていますが、一つ一つの要素をもう少し説明いたしますと次のようになると思います。

①の観点から
簡単に言えば順番が違ったと言うことです。計画する事業の予算を考え、必要な資金手当てができることを確認してから、この事業に参入することを決定するところを、まず「何が何でもこの事業に参入するぞ」と決定して、それから必要資金の手当てに奔走するというように順番が逆になってしまっています。

②の観点から
ですから事業参入を決定しているため、その事業に参入できるための必要条件と思い、開発者への契約料の支払いを絶対なことと考えた上、支払期日が3週間後と言う切迫した状況を作ってしまい、たとえば人脈から出資や社債の形で調達するとか、ベンチャーキャピタルからの出資を検討するとかの選択肢を、時間的な成約で閉ざしてしまったことが、高利の資金調達につながったと思います。

③の観点から
参入する事業の選択時に、やらなければならない調査を十分にすることなく、開発者の言動のみで信用してしてしまった結果、破綻してしまったわけですが、もし低利の資金調達ができていたとしても、事業が成立しなかった可能性が高かったと思われます。

ご相談に来られるお客様のお話を拝聴していますと、新規事業として様々なインチキくさい事業のお誘いもあるようです。
特に現在のような変化の時代は、既存事業に行き詰ったり、変革を求めて新規事業を考えないといけない場合もあると思いますが、この新規事業に参画し成功するのは結構大変です。
まず新規事業の資金調達が結構難しく、この例として最近あった実例をご案内いたします。

(ケース2 ベテラン編)
地方都市で20年にわたり広告代理店を経営されているA氏は、事業内容は新聞チラシ広告のウェイトが大きく、媒体の多様化や革新によって、ここ3年程前から売上利益とも横ばいから若干下降気味になっていました。
この時点でのA氏の会社の年商は直前期で2億5千万円、収支はトントンという状況でした。

たまたまA氏が所属するライオンズクラブに新規加入してきた、環境リサイクル事業をフランチャイズシステムのフランチャイジーのような形で経営するB氏と懇意になり、A氏は、B氏の事業内容をよく見聞きするうちに、自分の事業に限界を感じていたこともあって、B氏の事業が自分の事業よりも数段将来性があるように感じたと言います。

フランチャイズシステムならA氏も事業参入が可能と思い、必要な資金を確認したところ、土地建物、機械設備、運転資金などで2億円程度の資金調達が必要であると分かりました。

A氏は、地元の地銀や信金とは良好な取引を継続しており、公的資金を含めて7千万円の借入金があり、新規調達可能額は1千万円でした。

当然2億円-1千万円ですから、1億9千万円を調達しないと新規事業に参入できないため、新規調達先からの調達を弊社にご相談に見えた訳です。

まず弊社としては
①事業の根幹となる技術に対する信頼性と差別化ポイントの確認、事業計画の収益性、実現性、将来性を確認調査しましたが、確かにリサイクル事業の拠点をどこに置くかで、売上利益とも変わるものの、その可能性は高い事業と確認しました。

②A氏の会社の現状から、A氏単独では無理と判断して、資金提供の可能な事業パートナーを見つけることができないか?(できれば一人でもリサイクル事業に関連のある事業をやっている人が相応しい。)
また土地を借地でできないか?
以上2点を確認しました。
    
②の二つのポイントが可能であれば、建物は割賦、機械設備はリースで処理すれば、きついなりにこの事業の収益性から見て、実現の可能性があると思い、事業パートナーと土地の借地のポイントをご提案しました。

ところがA氏は残念ながら、利益が少なくなることと、人間関係の悪化を懸念して、どうしても最初は自分一人でやりたいので、ともかく、どこかから融資を、融資が駄目なら、資金提供をしてくれる会社か個人の方がいないかと、前回の創業期編のM氏と同じような状況になってきました。

地元の主な金融機関とは取引があるため、まず可能性のある都市銀行2行に無担保で運転資金の調達が可能かどうかを打診しました。

概算ですが、都市銀行の無担保融資は条件を満たせば、月商の1~2ヶ月が可能ですので、2行で4千万円~MAX8千万円の可能性がありますので打診したのですが、両行から融資は断られました。
この理由は何度もお話をしております自己資本率の低さと利益額の少なさが原因だったと思われます。

A氏は趣味がゴルフのため、4つのコースの会員券と自宅マンションが資産計上されており内部留保もないので自己資本比率が低く、業績の低迷で利益額の低さと相まって、非常に低い格付けとなったと思われます。

2行からの調達が難しいと言うことが分かった段階で、A氏単独では止めた方がよいとお薦めしましたが、聞き入れられず、お手伝いをこの時点でお断りをしました。

A氏はこの後とんでもないコンサルタントに500万円を騙し取られるのですが、この時点でリサイクル事業参入を一旦取りやめ、再度弊社にご相談いただくこととなり、その後は3名の事業パートナーを得て、今年の夏に開業予定となっています。
ただA氏にとっては今までの事業と全く違う分野の事業参入ですので、既存取引の金融機関には受け入れられていないため、本当に成功できるかどうかはこれからの状態です。

なんだ失敗の例ではないかと思われると思いますが、A氏の場合は前回のM氏の場合に比べて、資金の期限が切迫していなかったことが幸いしたのと、A氏長年の経験もあって、冷静さを失わず高利の資金に手を出さなかったことが致命傷にならなかったのだと思います。

でも500万円を騙し取られたのは、本当にもったいないと思われませんか?

自分も同業なので、偉そうなことは言えないのですが、絶対に不可能な資金調達を求めると、このようなコンサルタントに取り込まれるというお話を次回は書きたいと思います。
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 10年間資金調達コンサルティングをやっていますと、様々な業種の多くの経営者の方々とお知り合いになり、その方々の事業の成功と失敗も数多く見てきました。

そして、よくよく眺めてみると、成功する方と失敗する方には、それぞれに共通項があるように思えてなりません。
今回から何回かは、事業に成功された方と失敗された方の特徴などを、実例を中心に書いていきたいと思います。
敢えて整理しないで、できるだけ事実に直面した時の私見を中心に、感じたことをそのままお伝えしたいと思います。


事業の成功は、会社が持つ、人・物・金・情報の経営資源を最大限に生かすことであるということは、よく言われていますが、事業が成功する過程で、どの会社も起業してから2年間ぐらいは、経営資源の一つである資金の調達が非常に難しいと言うことは、前回までに書いてきた通りです。

経営資源の中でも特に「金」は、他の3つの資源を獲得したり充実するためにも、人体の血液のように不可欠なものであると私は思っていますので、異論もあると思いますが、特に創業期は最も大切な経営資源かもしれないと思っています。
経営者が成功するための最低必要条件はひょっとすると資金調達ではないでしょうか。

まず資金調達のできない典型的なパターンをいくつか書きます。本当は明るく、成功するパターンから書きたいところなのですが、失敗のパターンの方が分かりやすいですし、この反面教師として成功のパターンがある訳ですから、失敗のパターンをまずお話します。


◆資金調達のできないパターン1
「条件的に不可能な資金調達をしよう」とするパターンは、弊社に来られるお客様のなかで失敗された最も多いパターンで、創業期の経営者だけでなく、ベテランの経営者でも、状況によっては陥るパターンです。

資金を提供する金融機関も慈善事業ではなく、事業として資金提供を行うわけですから、その性格によって比重は違いますが、間接金融に絞れば、融資は、次の主なポイントのそれぞれの基準をクリアしないと、絶対に受けることができません。

1.直前3期と直近の財務内容やキャッシュフローの状況と事業内容などによる信頼性。(格付け)
2.土地など担保の信頼性。
3.代表者及び連帯保証人の信頼性。


代表的な融資も、1~3の要素を次のような比重で審査されています。
・銀行の無担保融資 
 1+3で、1が重視される
・不動産担保融資専門のファイナンス会社の融資 
 2を重点として+3と、少し1も考慮される
・商工ローン系や消費者金融系のローン 
 3をメインに1は参考程度

この3つの要素が融資を申し込む時点で、必要な資金の融資基準を上回らないと、実は全国どこの金融機関でもできないということを認識することが重要です。

(ケース1 創業期編)
3年前だったと記憶していますが、元大手通信会社の課長職だったM氏は、資本金1千万円で自動車の排気ガスクリーン機器の販売を目的とする会社を元同僚など3名で設立しました。
当初は海外の機器を製造販売する日本法人の代理店としてスタートする予定でしたが、たまたま画期的な機器の特許を申請している人を紹介され、この人と特許の独占な使用権を結び、自社で開発製造販売をする計画を持ったわけです。
要は、他社の一代理店ではなく開発製造販売というフルコースに事業を変更したわけです。
確かに、実験結果の書類を見ても、代理店契約を考えていた会社の機器を含め、その他の同業他社の機器に比べても、性能、価格で優位であるのは確かなようでした。

ところが、たちまち壁にぶつかったのは資金の問題です。資金は資本金1千万円と社長の実家から借入れた1千万円の2千万円で、事務所の保証金その他の支出を引くと、手元資金は約1千5百万円の状態でした。当初の計画ですと代理店加盟料が5百万円でしたから、残は1千万円になる予定でしたし、国民生活金融公庫から3百万円の融資も決まっていましたので、十分といえないまでも、なんとか事業を継続できる状況ではあったわけです。

ところが機器の開発製造から関わる計画を実行に移すとなると、特許の専用使用権契約料の手付金、開発費、試作品などを含めて、5千万円を新規に調達しないといけなくなり、この資金調達が上手くいかないので、弊社にご相談に見えた訳です。

ご相談に見えたのが、設立後半年程度でしたので、上記1の金融機関の格付けは取れないので、まず銀行からの調達は×ですから、開発者との契約料の支払いを先延ばしするか、この開発者からも出資できないかを確認しましたが、M氏曰く「技術が画期的なため、大手商社や自動車部品メーカーもこの開発者に接触をしてきていて、月末までには、最低この契約料の手付金2千5百万円を用意できないと、この事業機会を無くすのでなんとかお願いしたい。」と繰り返すばかりで、この月末というのがご相談を受けた日から3週間後でした。

新規に設立した会社が、新規に商品を開発する状況な訳ですから、ベンチャーキャピタルに打診するにしても、日が少なすぎますし、選択肢は次の方法しかなかったのです。

1.この契約料の支払条件を交渉して支払いを繰り延べる
2.知り合いから資金調達をする
3.不動産担保など、担保を提供するか、提供してくれる人を探す
4.契約自体を断念する

ところが、この社長は「1と4は論外。3は担保になるような物もないし頼める人もいない、2は知り合いにまだ事業がどうなるか分からないので迷惑をかけれない。」と言い張るわけです。

何度も何度も説明をして、融資をする金融機関がないということを理解した社長は、今度は「では個人で資金を提供してくれる人か、高金利でも良いから金融業者を紹介して欲しい。」という、お読みの方もヤバクなってきたと感じられるように、機器の開発製造販売のビジネスモデルに酔ってしまい、事業を構築するという冷静な判断ができない状態になっていました。

弊社はこの段階で、お手伝いはできないとお断りしたのですが、後日残はかなり悲惨で、よく調達できたと思いますが、結局のところ、いろんな数多くの街金的なところから約3千万円を借入、開発者へ契約料を支払い、試作品まではできたらしいのですが、製品化に更に5千万円程度の資金調達が必要となったそうです。
当然できないため、製品化が遅れ、資金の回収もできない訳ですから、返済や利払いも滞り、夜逃げをしたと聞きました。

また後日、全く別のお客様から、この開発者の製品は性能に問題があるだけでなく、特許の専用使用権を結ぶと言って2千万円~5千万円を取られたと人が多いと聞き、世間は狭いと感じただけでなく、なんであの社長はもっと冷静に開発者を見なかったのかと残念に思いました。

実はこの話、秘密保持の観点から、実際にあった実例を若干脚色をしていますが、80%は実話です。このパターンのケースは本当に多いので、もう少しお話させてください。次回に続きます。


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プロフィール
私は資金調達コンサルティングをコア事業にした会社を、事業パートナーの都市銀行出身の元銀行マンと経営しています。 私の前職は不動賃貸業や不動産開発業の会社のオーナーで、バルブ期にはピークで約500億円の借入金があり、この処理にあたって修羅場もくぐり、この時の経験から銀行被害の方へのサポートをするようになり、このことが高じて、現在の中小企業や個人の方々の資金調達のお手伝いの仕事を始め、現在に至っています。
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